JAXAの星出宇宙飛行士がISSで着るTシャツのデザイン募集に参加します。 〜 デザインを作るときに考える事。

父もSF好きだし、僕もガンダム世代というか、いわゆるガノタのひとりという自覚があります。
そういうなんといいましょうか「あ、好きなんだな」という、匂い立つ汁でもこぼれていたんでしょうか。
昨日、社長から「(P)さん、コレ、応募だす?」という事で、羊の皮を被った狼とでも言いましょうか。質問の様な指示が飛んできました。

星出宇宙飛行士がISSで着用するTシャツのデザインを募集しています:JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在 - 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター - JAXA

飛んできたURLを見た瞬間、僕は尻尾をパタパタ振って大喜びしている犬を連想させんばかりの積極さで「出します!」と即答していました。
でも、業務時間中に作るしか無いわけで――。

――というわけで、今回の記事のテーマ。
応募用の作品ですので、完成した絵をお見せする事は出来ませんが、デザインを作成する時、どんな事を考えながら作業を進めているかについてまとめてみたいと思います。

とは言っても、とっても基本的な事でしかありません。
何をくどくどと……なんて思っちゃう人もいるかも知れませんね。
なので、この記事を読んでくださってる方が、すでに「良い絵」や「デザイン」を趣味で作っているという前提で話を進めます。
つまり、リクエストで画像を用意した経験の少ない人向けに、テーマが指定された時はどんな手順で、どんな考え方で作成しているのかというお話です。

道しるべの一つとして読んで頂けると幸いです。

【まずは課題内容を見てみましょう】
宇宙航空研究開発機構JAXA)は、星出宇宙飛行士が、第32次/第33次国際宇宙ステーションISS)長期滞在中(2012年6月頃から約6ヶ月間滞在予定)に、「きぼう」日本実験棟での活動時に着用するTシャツのプリントデザインを募集いたします。”
採用されれば、星出宇宙飛行士に、宇宙で着てもらえる……。
採用される可能性なんて、低いのに、SF好きのココロをくすぐられ、もうニヤケ顔です。
さて、どうまとめましょう。

【絵でも文章でも、創作を開始する前の調査は大切です】
まずは浮かんで来るイメージをカタチにする事にはこだわらず、メモを充実させます。
ペンタブ片手に、浮かんだ絵を大雑把にメモとして書いたり。星出宇宙飛行士の活動中の写真を拝見したり。連想ゲームの様に浮かんでくる言葉を元に、関連サイトを、とにかく検索して重要そうな文章や項目、画像等々をメモしたり。まずは取材として、対象についてとことん調べます。

デザインというのは、ただ単に良いカタチをまとめる行為だけでは終わりません。
全てのカタチ、色、文字に対して意味が込められます。
最初のメモを集めるという行為は、デザインの土台を決める為に不可欠ですし、そうして生み出されるデザインには強い説得力が備わります。

創作系のお仕事をする際、取材や事前調査がとても重要になるのは、こういう理由からです。
絵を描いてと言われて、浮かんだ絵を描いても、ストーリーも感動も何もない、単なる図形にしかなってくれません。


【調べ物が一段落したら、作るモノのカタチを決めます】
こうして、最初の「必要なアイデア素材あつめ」が終わったら、集めたメモ類から浮かんでくる、とても大雑把なデザインのラフを作成開始します。
やっとデザインらしい作業です。

ところで、今回の課題はTシャツ向けのデザインです。

Tシャツのデザインを考える場合、レイアウトなどなど色々な技術的な要素を考える必要が出てきます。
だけど、技術的な要素というのは、所詮「ものさしの使い方」程度のものでしかなく、感性の部分についての手助けにはなりません。
では、感性の部分、方程式で書き表せない「作りたい雰囲気」についてはどう考えるのか。
次の様に考えるとスッキリします。

・誰が着るのか、誰に着て欲しいのか。
・今回は着る人も限定されてます(星出宇宙飛行士)。どんな人が着るのか。 ※注
・その人が気に入ってくれそうなデザインは、どういうものなのか。 ※注

「※注」の部分は面識もありませんので、検索して得た情報と想像を手がかりにするしかありません。

これら三項目の他、僕の場合は次の事柄も考える様にしています。

・自分も着たいと思うデザインか。
・一発ネタっとして着られるだけではない、何度も繰り返し着てもらえる、大切にしてもらえるデザインか。

合わせると五つの項目ですね。
最初の項目以外は全て、前の段階の情報集めで得た事柄から想像・推測するしかありません。
だけど、これだけでも、どういうデザインを、どういう意味を込めて作成するのか、その方針が固まります。
やっと作品をつくるために筆を動かせますね。

【文字を入れる場合】
デザインを作成し始めると、Tシャツの場合「文字」を入れたくなる事が大変多いです。
ページをめくって長い物語を読むことが出来る本とは違い、Tシャツにはページなんてありませんし、そんなに多くの文字を追加する事も出来ません。
とにもかくにも、適当に文字を入れちゃうと、せっかくのアイデアを台なしにしてしまう危険があるので、注意が必要です。
最初の段階で作成したメモの中にある事項を文字として追加する場合は問題ないのですが、メモに無い事柄を文字にする場合、追加で入れたい文言について、調べる必要が出てきます。

例えば、今回の「きぼう」が英文だとどういう綴りになるのかとかですね。
言葉や文章によっては、翻訳サイトの助けを借りる事も出来ない部分だけに、結構厄介です。
着る人の目線で、嬉しくなる様な自慢したくなるような内容になる様に、映画のポスターに入れるキャッチコピーを考える手順が発生します。
多すぎない文字数、デザインとして配置しやすい単語にまとめ上げる事が出来れば、この段階はクリアです。
元々、結構時間を取る段階ですので、慌てずジックリいきましょう。※ヘタをすると、デザインをまとめる作業よりも時間が掛かる場合があります。

【あとはバランスです】
図柄もほぼできた。入れたい文字もまとまった。
そうなってくると、あとはそれらの部品を上手に配置してまとめ上げる最後の作業になります。
プリント方法も早い段階で確認できていると、注意点が絞り込まれるので有利です。

使用される予定のTシャツの生地の色を確認してみると”黒、青、グレー、紺など”という表記になってます。使用可能な色数の指定もあります。――という事は、シルクスクリーンプリントで、ほぼ間違いないでしょう。
〜Tシャツにおける代表的なプリント方法の違いはコチラ。

というわけで、生地の色を前述の色に設定してデザインを作成開始します。
今回の場合「黒」と「グレー」は別に考えた方が良いでしょうから、グレーだけ除外して考えます。
※黒・青・紺で見やすい色を選んでも、グレー上でその色が見えやすいとは限らないので。

用意したパーツを仮定した色の上で組み上げます。
バランスについては「こうするのが良い」とか「黄金率はコレ」とか色々と参考に出来る情報があります。この辺については、作っている人の好みと経験の数も関わってくると思いますので、ヒント的な事を探すことばかりに注力するのは避けた方が良いでしょう。時間も飛んでいっちゃいますし。

秤のバランスを取る行為に似ていると思えば良いかもしれません。
ちょっと部品をずらすだけで、大きく表情が変わってきますので、慣れるまでは色々試しながら、ジックリと取り組みましょう。

前の同僚には、デザインを左右反転させたり、遠くから見なおしたり、いろんな方法でバランスをチェックしている人がいました。
普通とは違う見方をする事によって、描いた本人が気づきにくい所をチェックするという効果がありますのでお試しアレ。

――これらの手順を踏むことによって、デザインというものは、ただの図形と文字の集合から、意味が込められた説得力のある構造を得る事となります。

偉そうな事を書いてしまったなあと気恥ずかしさを感じつつ、自分のデザインを見直すと、果たして今までの自分には出来ていたのだろうかと疑問を感じる事は、多かれ少なかれ、結構、誰にでもあるものです。
場数を踏むという事は、そうやって繰り返してきた反省を踏まえて、自分が注意すべき所が意識しなくても見える様になってくるという事なのかもしれません。

上達したいのなら、とにかく作って、見てもらえという話をよく聞きます。
これは、きっとこの事を指しているのだと思います。



それでは今回はこの辺で。
また来週〜。(土日はブログお休みです)

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